初心者ライダーの装備は何から買う?命に関わる順の優先度と予算目安
免許を取ってバイクを契約すると、次に待っているのが装備選びです。用品店に行くとヘルメットだけで数千円から10万円超まで並んでいて、何が違うのか、どこまで揃えれば走り出していいのか、正直わからないと思います。私も最初はそうでした。
この記事の結論を先に言うと、装備は「転倒したときに命に関わる順」で買うのが正解です。具体的には ①ヘルメット ②グローブ ③プロテクター入りジャケット ④ブーツ ⑤胸部プロテクター の順。雨具やインカムは後回しで構いません。合計予算は5〜10万円を見ておけば、恥ずかしくない装備が一通り揃います。順番に理由を説明していきます。
装備の優先度は「致命傷になる部位」から逆算する
装備選びで迷ったら、判断基準はひとつです。転倒したときにどの部位のダメージが命に関わるか。警察庁が公表している二輪事故の統計では、死亡事故の損傷主部位として頭部と胸部が多いとされています。つまり、頭を守るヘルメットと胸を守るプロテクターは「あると安心」ではなく「ないと死ぬ可能性が上がる」装備です。
一方で、手や足は命に直結しにくい代わりに、軽い立ちゴケでも真っ先に路面に着く部位です。教習所や駐輪場での低速転倒でも、手をついた瞬間に素手なら手のひらの皮膚を持っていかれます。だからグローブは優先度2位。この「命に関わる順+接地しやすい順」で並べたのが、冒頭の①〜⑤です。
①ヘルメット:規格の意味とフルフェイスを勧める理由
まず規格マークの読み方
日本国内でヘルメットを販売するにはPSCマーク(消費生活用製品安全法)が必須で、実質的にセットで付いてくるのがSGマーク(製品安全協会の安全基準+対人賠償の保険付き)です。この2つがないものは、そもそも国内で正規に売られる乗車用ヘルメットではないと考えてください。いわゆる「装飾用」と書かれた半キャップがこれに当たります。
その上のグレードとして、JIS(日本産業規格。衝撃吸収などの試験がより厳格)、SNELL(米国の民間規格。市販規格ではもっとも厳しい部類とされる)、MFJ公認(レース出場に必要)があります。初心者の実用範囲では「PSC/SGは最低条件、できればJIS以上」と覚えておけば十分です。Arai・SHOEI・OGKカブトといった国内主要メーカーの製品なら、この条件はほぼ満たしています。
形はフルフェイスを勧める
ヘルメットにはフルフェイス、ジェット(あごが開いている)、システム(あご部分が開閉する)、半キャップなどの形があります。私は初心者にはフルフェイスを勧めます。理由は単純で、転倒時にあごから路面に落ちるケースが少なくないとされているからです。あごを守れるのはフルフェイスとシステムだけで、半キャップは論外、ジェットも顔面は無防備です。
「視界が狭そう」「圧迫感がありそう」という不安はよく聞きますが、これは慣れの問題が大きいです。私はSR400でもZ900RS CAFEでもフルフェイスですが、走り出してしまえば気になりません。むしろ高速道路では風切り音と風圧の少なさでフルフェイスのありがたみを実感します。
価格帯とサイズ選び
予算の目安は3〜5万円。OGKカブトなら3万円前後、SHOEI・Araiなら5〜7万円が中心価格帯です。1万円台のフルフェイスも存在しますが、内装の質やベンチレーション(換気)の差が快適性に直結するので、毎週乗るつもりなら3万円以上を勧めます。そしてサイズは必ず店頭で試着してください。頭の形(丸型・楕円型)とメーカーの相性があり、ネットのレビューではわかりません。試着して型番を決めてから、価格はネットで比較するのが賢い買い方です。
②グローブ:軍手が絶対にダメな理由
優先度2位はグローブです。理由は前述の通り、転倒時に人間は反射的に手をつくから。時速10km程度の立ちゴケでも、素手や軍手なら手のひらの皮膚は簡単に削れます。手は神経が集中している部位なので、治るまでの日常生活が本当につらい。軍手は滑る上に一瞬で破れるので、防護としてはほぼ無意味です。
バイク用グローブは手のひらと甲にプロテクションが入っていて、操作性も考えて作られています。予算は5千円〜1万円で十分。春夏用と秋冬用で素材が違うので、納車の季節に合わせて1組買い、シーズンが変わったらもう1組足すのが現実的です。冬用だけは操作性と防寒の両立が難しいので、少し良いもの(1万円前後)を選ぶと後悔しません。
③ジャケット:プロテクター入りが前提
3番目がライディングジャケットです。ここで重要なのは「バイクっぽい見た目の上着」ではなく、肩・肘・背中にプロテクターが入っている(または入れられる)こと。転倒時に路面と接触しやすい肩・肘と、後方に投げ出されたときの背中を守るのが役割です。
季節ごとの考え方はこうです。
- 春秋:標準的なテキスタイルジャケット。最初の1着はこれ
- 夏:メッシュジャケット。走行風が抜けるので、実は半袖より涼しく感じる場面も多い
- 冬:ウィンタージャケット+電熱やインナーで調整
予算は2〜3万円。コミネ、ラフアンドロード、RSタイチあたりの国内ブランドなら、この価格帯でプロテクター標準装備のものが選べます。デザインで革ジャンに憧れる気持ちはよくわかりますが(SR400に革ジャンは確かに似合います)、プロテクター内蔵型でないなら、別途インナープロテクターを着る前提で考えてください。
④ブーツと⑤胸部プロテクター
④ライディングブーツ・シューズ
足首はバイクの下敷きになりやすく、シフト操作で左足の甲は常に酷使されます。おすすめはくるぶしまでしっかり覆えるブーツです。ライディング専用ブーツならベストですが、しっかりした作りのワークブーツ系でも、スニーカーとは保護性能が段違いです。スニーカーで乗っている人も見かけますし、乗れないわけではありませんが、くるぶしがむき出しなのと、転倒時に簡単に脱げてしまうのが怖いところ。足元を固めると操作の安心感も変わるので、予算1〜2万円を目安に、まずはブーツを1足用意しましょう。
⑤胸部プロテクター
優先度5位としましたが、重要度でいえばヘルメットに次ぐと言っていい装備です。前述の通り、二輪の死亡事故では頭部に次いで胸部の損傷が多いとされています。それでも5位にしたのは、ジャケットに胸部パッドを追加装着できる製品が多く、「ジャケット選びとセットで解決できる」からです。ジャケットを買うときに、胸部プロテクター対応か・別売りパッドはいくらかを必ず確認してください。別売りでも数千円で追加できます。
後回しでいいもの:雨具・インカム・パンツ
逆に、納車日までに揃っていなくてもいいものも挙げておきます。
- レインウェア:雨の日に乗らないうちは不要。ツーリングに行き始めたら必須(北海道ツーリングの準備でも書きましたが、ロングツーリングでは命綱です)
- インカム:ソロで走るうちは急がない。ツーリング仲間ができたら検討
- ライディングパンツ:理想は膝プロテクター入りですが、最初は厚手のデニムでも走り出せます。余裕ができたら追加
- 盗難対策のロック類:装備というより車両側の話ですが、保管環境によっては装備より先に必要なこともあります
要するに「快適装備は乗りながら足す、防護装備は乗る前に揃える」という切り分けです。
予算配分の目安:合計5〜10万円の内訳
ここまでの内容を予算表にまとめます。金額は目安です。
| 装備 | 最低ライン | 推奨ライン | 優先度 |
|---|---|---|---|
| ヘルメット(フルフェイス) | 3万円 | 4〜5万円 | ★★★★★ |
| グローブ | 5千円 | 1万円 | ★★★★★ |
| ジャケット(プロテクター入り) | 1.5万円 | 2〜3万円 | ★★★★ |
| ブーツ・シューズ | 1万円 | 1.5〜2万円 | ★★★ |
| 胸部プロテクター(追加パッド) | 3千円 | 5千円〜1万円 | ★★★★ |
| 合計 | 約5.3万円 | 約9〜10万円 | — |
貯金40万円でバイクを買うなら、車両30万円+装備6万円+登録や保険の初期費用、くらいの配分が現実的です。予算を削る順番は「ブーツ→ジャケットのグレード→グローブ」で、ヘルメットは最後まで削らない。ここだけは守ってください。
中古装備の注意点:ヘルメットだけは新品一択
フリマアプリで装備を安く揃えたくなる気持ちはわかります。私自身、SR400を個人売買で買った人間なので中古を否定はしません。ただし装備には中古OKとNGがはっきりあります。
- 中古NG:ヘルメット。内部の衝撃吸収ライナーは一度の落下や経年劣化で性能が落ちるとされていて、外観からは落下歴も劣化も判別できません。前の持ち主が落としたかどうか、確かめる方法がないんです。また使用開始から3年程度での買い替えがメーカーから推奨されています。命を預ける装備で出所不明のリスクを取る意味がありません
- 条件付きOK:ジャケット・パンツ。プロテクターの割れ・欠品と、転倒痕(擦り傷)がないか確認できれば実用になります
- OK:ブーツ、シートバッグなどの小物。消耗状態が見た目でわかるものは中古で節約して構いません
浮いたお金はヘルメットのグレードに回す。これが中古活用の正しい方向です。
よくある質問
Q. バイクの装備は全部でいくらかかりますか?
A. 一通り揃えて合計5〜10万円が目安です。ヘルメット3〜5万円、グローブ1万円前後、ジャケット2〜3万円、ブーツ1〜2万円という配分が現実的です。ヘルメットだけは予算を削らないでください。
Q. ヘルメットは中古でもいいですか?
A. おすすめしません。衝撃吸収ライナーは落下や経年で性能が落ちるとされ、外観から落下歴を判断できないためです。ジャケットやブーツは状態を確認できれば中古でも構いません。
Q. ジェットヘルメットではダメですか?
A. 違法ではありませんが、あごを守れるのはフルフェイス(とシステム)だけです。事故時にあごを打つケースが少なくないとされるため、初心者にはフルフェイスを勧めます。
Q. 夏でもジャケットは必要ですか?
A. 必要です。夏はメッシュジャケットにすれば走行風が抜けて意外と快適で、プロテクターはそのまま機能します。半袖での転倒は低速でも皮膚を大きく削ります。
まとめ:ヘルメットにお金をかけて、あとは段階的に
最後にもう一度、優先順位をまとめます。①ヘルメット(PSC/SG必須・できればJIS以上・フルフェイス推奨・新品)②グローブ ③プロテクター入りジャケット(胸部パッド対応)④ブーツ ⑤胸部プロテクター。ここまでが「乗る前に揃えるもの」で、合計5〜10万円。雨具やインカムは乗りながら足せば大丈夫です。
装備が揃ったら、次は実際に走る計画を立てましょう。最初の1台選びに迷っているならSR400やGB350のレビューを、いつかのロングツーリングを夢見るなら北海道ツーリングの準備ガイドをどうぞ。安全に、長くバイクを楽しんでください。